石を売る

無能オヤジの無能ブログです

ブラック企業に勤めていた頃の思い出(5)

 ブラック企業の三大必要条件(?)は低賃金、サービス残業パワハラであろうかと思います。

 わたしが勤めていた会社はもちろんそれらの条件をクリア(?)していました。ただ、「低賃金」に関しては、見かけ上は20代の新入社員だとコンビニでアルバイトするよりはましではありました。ただし問題は「サービス残業」で――もちろん「サービス」したくてしているのではありませんが――それも含めて時給に換算すると最低賃金を大きく下回るという悲惨な状況でした。ちなみにわたしは「専門職」扱いだったので手取りで中小企業の平社員並みぐらいはありました(それでも年齢を考慮すると悲惨といえば悲惨ですが)。

 わたしは若い社員に常々「こんなところにいるぐらいならコンビニでアルバイトしていたほうがましだろう?」と言っていましたが、それでもある程度は頑張るので不思議でした。たんに最近の若者にしては根性があるとかということではなく、どうもみな「正社員」というポジションにこだわりがあるようです。つまり「正社員」でなくなることが大変な恐怖らしいのです。

 

 わたしは前に書いたように以前は専門学校や塾の講師をしていたのですが、講師という職業は事務職よりは専門職に近いです。専門職の代表は医師、看護師、弁護士、行政書士社会福祉士などいわゆる士(師)業ですが、こういった専門職は特定の企業や団体に所属していても独立性が高く、帰属意識もそんなに強くない。資格が必要なので労働市場はそれぞれの職業内で閉じていますが、他の職業に比べると流動性は高い。そして賃金や待遇はそれぞれの資格やスキル、キャリアに大きく依存していてどこにどのような身分で所属していたかはさほど重要ではない。なので「正社員」という身分にこだわりをもっている人はそれほどいないと思います。

 

 その一方で営業、販売、事務などの職業は「正社員」という身分、つまり正規雇用にこだわりが強いようです。たしかに正社員と派遣・アルバイトなど非正規雇用、あるいは同じ正社員でも大企業と中小企業では賃金も待遇も福利厚生も大きく格差がある。ですから「大企業」や「正社員」へのこだわりが強いのは一般論としては分かります。

 ただしそれは正社員が派遣・アルバイトより恵まれているという「正常な状態」にある場合です。わたしのいた会社はそうした「正常な状態」にはまったく、逆に正社員の方が劣悪な労働条件にある。なので、それにもかかわらず「正社員」にこだわるのはわたしから見るととても不思議でした。

 たぶんいったん派遣・アルバイトなど非正規雇用になるとそこから再度正社員として就職するのがすごく難しい、という現実とそれに対する恐怖がこだわりの背景にあるのでしょう。ただはっきり断言できますが、ブラック企業にいるのは人生のムダ遣いです。それぐらいなら、コンビニでアルバイトしながら資格の勉強するとか起業にチャレンジするとかの方が、かりに成功しなくても重要な経験として残ります。

 たしかにブラック企業も「自衛隊体験入隊」みたいなもんだと考えれば、体験してみる価値はあるかもしれません。しかし「体験入隊」程度に留めておくべきです。長くいても有意義なことはまったくありません。若ければ若いほどそうです。わたしみたいなオヤジになると―とくに無能オヤジになると―「人生のムダ遣い」とかもはやどうでもよくなるので、嫌な思い出にはなりますが「後悔」はそんなに感じませんが。

 

 じっさい若い社員はけっきょくは全員例外なく心身ともにボロボロになってやめていきました。みんな素直で気のいい若者だっただけに―社長はそういうタイプだけを採用していたので―大変残念ですが、今は元気にやっていることを祈るばかりです。