石を売る

無能オヤジの無能ブログです

ブラック企業に勤めていた頃の思い出(1)

 先日、数年前までブラック企業に勤めていた話をしましたが、少し話を続けようかと思います。

 この会社にはハローワーク経由で入りました。一般の転職エージェントや転職サイトも一応登録しましたが、すでに中年オヤジの年齢になっていたので期待はあまりできず、ハローワークの求人情報もマメにチェックしていました。

 当然ハローワークの求人は中小企業ばかりで、しかもブラック率が高いことは承知していました。したがってとりあえず就職してみてダメだったらすぐ辞めればいいや、ぐらいに考えていました。

 これがそもそも根本的に誤りで、まったく甘い考えであることは後になって分かりました。

 

 ただ就職の機会は意外に早く来ました。就職活動を始めてから1ヶ月もたっていない3月半ばのある日、ひょっとしたら見込みがあるかもしれない求人を見つけました。事業内容は経営コンサル、とくに販促・SP(セールスプロモーション)を中心にしている会社で、社長以外に従業員が5名ということです。設立から10年近くたっているのですが、これまでずっと少人数でやってきたが新規事業を拡大するので急遽人材募集、と書いてありました。

 わたしはコンサル業にはまったく縁がなくスキルもキャリアもないのですが、採用条件に一般の事務系の人にはほとんどないじみのないある特殊なパソコンソフトのスキルがあり、わたしはたまたま専門学校の講師をしていた時代にそれを身につけていたので、これはいけるかもしれないと思い応募することにしました。

 求人を見つけて早速電話で連絡すると、すぐにでも面接したいとうことでした。そこで数日後、六本木の雑居ビルにあるオフィスを訪ねました。

 

 オフィスはペンシルビルのワンフロアー・ワンルームでした。広さは40平米もないでしょう。ただ掃除は行き届いているようで見かけは清潔できれいでした。

 入り口で出迎えてくれたのは、一瞬「お!?」と戸惑ったほど30歳ぐらいの仲間由紀恵似(マジ)の美人の女性でした。後で分かったのですが、女性は社長の奥さんでした。パートの女性事務員が病気で入院したで急遽手伝いに来ていたのでした(ちなみに奥さんは形式上は役員です)。

 奥さんは「ちょっと場所分かりづらくありませんでした?」とニッコリ微笑みながらお茶を出してくれて、わたしは年甲斐もなくちょっとドギマギしながらミーティング・テーブルにしばらく座っていました。

 やがてパーティションで区切られた奥からおもむろに社長が現れました。ロマンスグレーのボリュームのある髪とひげをたくわえ、黒のタートルネックとグレーのジャケットといういかにもコンサルっぽい出で立ちでした。雰囲気は若い頃の津川雅彦に似ています(社長の年齢は50歳です)。

 「今日は面接に来ていただいて有り難うございます」とよく通る太い声で丁寧に挨拶してきました。ただ、口元は笑みを浮かべているのものの目が笑っていない。

 社長はまず会社の説明をしばらくしました。会社の経緯、事業内容、組織構成などを卓上プロジェクターを使ってひとしきり説明した後、最期に一言次のように言って話を締めました。

 「再来年度には六本木ヒルズに引っ越す予定です。」